鎌倉➡江の島➡浜松へ⑩
ひたすら徒歩で降ります。
すでに午後二時を過ぎていましたので
ちょっと急ぎました。
夕食のお店の予約時間が決まっているので
今日の夕方には浜松に到着しなければなりません。
なぜ浜松を選んだか?
それは、居酒屋百名山の「60番 貴田乃瀬」に
行きたかったからです。
この本の書き手で呑み手の太田和彦さんは、
友人から
「主人は料理の鉄人、ただし頑固。
日本酒に詳しく
自ら料理に合わせて酒を運ぶ」
と聞いていたそうだ。
どのくらい頑固かと言うと、
それは料理について書かれているブログに表れている・・・
また、何年か前、とある製薬会社が、
お店と大将に無礼を働き、
出禁になっているというエピソードからもうかがえる。
なにやら敷居が高そうだが、
それでもそのお店に行きたかったのは、
〆鯖を食べたかったからです。
とはいっても、
実は私は光り物が少し苦手です。
あるお店で、〆鯖を頂いたときに、
体調が悪かったからなのか、
古い〆鯖だったからなのかわかりませんが、
当たってしまったのです・・・💧
それから光り物に手を出すのが、
苦手となりました。
しかし、ここの〆鯖は是非頂いてみたいと思いました。
この〆鯖は、ご主人がもっとも研究を重ねた品だそうです。
サクに冷凍をかけ、外側を凍らせて酢につけると
浸透圧で外側だけに酢が利き、中身は刺身のまま残る・・・「居酒屋百名山」より

本当に周り2ミリぐらいだけが〆られています。
そんな今まで出会ったことがないこの〆鯖を
ぜひ頂いてみたい・・・
そう思いました。
しかもその〆鯖に日本酒を合わせてくださる・・・

仕事には3種類あると思います。
①忠実にこなす仕事・・・
②できる仕事・・・
③「創造」としての仕事・・・
どれも手を抜いてはいけない大切な仕事です。
①の典型的な例は、掃除。お冷、おしぼりをお出しすること。
②は、飲食業なら手料理。
③は、どんな形でもいい、業種限らずその人にしかできないこと。
順に、
内側で見えないものから、
内側を基底に外側へ打ち出し、
お客様に表現していく仕事と言えばいいでしょうか・・・
「表現」ですから
評価は無意味ですし、
される必要がないのです。
②は①がなければ、がっかりしますし、
③も①②がなければ、貧弱になるか、そもそも生まれません。
また、どの仕事も「心」が伴わなければ、
お客さんにその不誠実さが伝わり、
不愉快な思いをさせます。
ご主人の〆鯖は、
この三つのすべての集大成だと思います。

だからこそ、
③は仕事でありながら
「芸術」にもなるのです。
普通に、
鯖を仕入れて、
〆鯖をつくる・・・
それだけでも十二分に美味しいし、
居酒屋として立派ですが、
それを芸術の域まで高めようとする・・・
唯一無二、
唯我独尊、
その存在感を
人
お店
お料理
まるごと感じたいと思いました。
行かせていただき・・・
思った通り、
心から行ってよかったお店でした。

圧巻・・・
敬意・・・
私がまだ一人でお店を切り盛りしていた頃、
①②止まりでした。
③の域までご自分の仕事を高める困難さと熱意・・・

(こちらも超絶品、自家製レーズンバター)
それをこちらのご主人は
30年近く継続されていらっしゃいます。
浜松や経由の旅のときは、
またこのお店に行かせていただきたいと思いました。
ちなみに、こんなに素晴らしいお店でも
客だからといって偉そうに料理ウンチク・嫌味を垂れ、
文句を言う人もいるようです。
「金を払うお客様のご要望は聞くものだ」とふんぞり返る前に、
自分が言っているのは、
ご要望ではなく、
ご欲望だと気づくべきです。
お店側は、基本お願いはできても
余程でない限りお客様には文句が言えません。
その潜在的立場に胡坐をかいて
無理難題を言うのは卑怯というものです。
お客様とお店は
「礼」「敬意」を基底とした対等な立場です。
[スポンサーリンク]
