山寺、一歩一歩
まるで人生を縮図したような濃密さがある。

一段一段、一歩一歩...
ただ足を上げ、下ろすことだけ考える。
一段一段、一歩一歩...
石段も人生も
所詮人間はそうでしか歩けないのだ。
石段から足を離し、膝をゆっくりとあげる。
あげた足の裏を次の石段にのせ
ゆっくりと体重をかける。
ここで焦ってはいけない。
ゆっくりゆっくりだ。

両手は軽く組むように胸の前で畳む。
これはTV日本百名山で登山家の人たちがよくやっていたので
以来、少し長めのきつい登りではまねている。
そうするとからだの芯に重さが集中して
余分な動きがなくなる。
リラックスをして力を入れるときの基本の歩みはナンバ。
※ナンバ・・・ナンバ歩きとも呼ばれ、右手と右足、左手と左足を
それぞれ同時に出して前に進む歩き方
だから、両手の振りはいらない。
両手を振るようになったのは明治にはいってから。

途中、西洋人が一段飛ばしでさっそうと登って行った。
なにかのトレーニングでもされているのかと驚いた。
山は征服するもの・・・
だから、登山は人間と山との戦い・・・
西洋人はそう考えてきた。
しかし、日本人はちがう。
山に入るのは、古来から、山と融合するものと考える。
山とひとつになるために登るのだ。
だからスピードはいらない。

以前、金毘羅山で1300段余りを登った時は
気が急いて登ったので、
若かったのにしんどかった。
あれから25年ほどたって今回の1015段・・・
300段ほど違うが、あのときより楽に感じたのは
自然の時の流れと自分のからだ時間が合い始めたからか・・・

年を取るほどにいろいろわかって
人生は楽しい・・・

(五大堂からの眺望)
