秋、処暑のころ⑩・・・玄徳の習得(4)
「自由」と「平等」は決して共存できないジレンマがあります。
ときに、ある人の自由は、
別の人の不自由を作り出すことになるからです。
たとえば、会社で有給をとる自由が与えられていますが、
その有給は、別の人の仕事量を増やしたり
代わりに自分の仕事をしてもらわなければいけない人が出てくるものです。
また、人間の経済発展の「自由」は、
自然界の動植物の不自由、森羅万象の破壊をもたらします。
そういう意味で一見耳障りのいいことばを二つ並べてみると
決して同時に相容れない問題が発生することはままあります。
そのことは、「自己実現」とその下位の欲求が
自己矛盾を起こすことと似ています。
例えば、ジョン・レノンは、
まぎれもなく「自己実現」を果たした人に入るでしょう。
しかし暗殺され、安全の欲求を満たすことはできませんでした。
名優とよばれる人の子供が問題を起こして逮捕されたり、
家庭が崩壊してしまうことはよくあることです。
まるで「自己実現」のかわりに
「愛と所属の欲求」が犠牲になっているようです。
一人の人間のなかで、こういった自己矛盾を起こすことはもちろん
前述したように、他者との関係でもこの矛盾は起きます。
もちろん親しい人の間柄では、「協力」で事足りますが、
全くの見ず知らずの間柄や地球の表と裏では、そうもいきません。
経済発展したある国の汚染物質が
対流や海流にのって他国を汚染するのは
実に身勝手な「自己(国)実現」といっていいでしょう。
私たちの欲求は、直線的、階層的に、
自他同時に叶えられるものではないのです。

(図は、「マズローの欲求5段階説をこの上なく丁寧に解説する」より)
それに加え、マズローのこの理論には
「実証」段階で疑問点が投げ掛けられるいるのも事実です。
つづく・・・
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