夏、小満のころ⑥・・・かっぱ
かっぱらっぱかっぱらった
とってちってた
かっぱなっぱかった
かっぱなっぱいっぱかった
かってきってくった
谷川俊太郎の詩「かっぱ」である・・・
大学一年の終わり・・・
わたしの記念すべき最初の舞台の作品が、
この「かっぱ」である(笑)
この詩をコミカルなリズムに合わせて朗読する音声が流れる・・・
あの頃と同じ音源を探したが、ちょっと見つからない。
別のバージョンだが、こんな感じである。
こんな感じのスットンキョウなリズムに合わせて
コミカルに踊るのだ。
この時は一応ストーリーのような流れがあった。
最初はリズムに合わせて楽しくみんなで遊ぶ・・・
やがて雨が降らなくなり、水不足で水の取り合いになる・・・
頭の皿が乾き始めかっぱが衰弱する・・・
さいごに舞台中央に芥川龍之介の蜘蛛の糸のように
一滴の水が落ちてくる・・・(実際に落ちるわけではない)
それに向かって一斉にみんなが飛び込む・・・
(ここで私のソフトボールのダイビングキャッチがいきる(笑))
倒れている群の中から、一人がゆっくりと立ち上がって
手のひらを広げ その水滴を一粒受け止める・・・
実際にはないその水滴を
目線としぐさで観客に想像させる。
「あ゛っ」
喜びとも驚きともつかぬかっぱ語で
おどけた声を上げ、頭の皿を突き出す・・・観客(どっと笑) (完)
実はその最後の一人がわたしだった。
完全にお遊戯だ(笑)
19歳のうら若き乙女たちがやるんだから
ちょっと笑える・・・
まあ、はっきりいって「あほ」だ。
でもこの「あほ」を大真面目にやるから面白い。
衣装は、たしか・・・Tシャツに短パン(色は忘れた)、それに
軍手をみどりに染めて水かき風にした。
このかっぱは、意外にもウケが良く、
客を笑わせたようだ。
当時、「かっぱ」を演じながら
昔を思い出していた・・・
小学生の時、クラスのみんなを笑わす天才がいた。
しゃべりと身振り手振り・・・
その子がしゃべるとみんなが笑ってクラスが明るくなった。
あこがれた・・・
「自分もあんな風に人を笑わしてみたい」
いつの間にかその子をまねるようになった。
人を笑かすこと・・・
みんなが笑顔になること・・・
なんてhappyなんだ・・・
そう、これも思い出していた・・・
突拍子もないことだが
いつしかあこがれの仕事が
サーカスのピエロになった。
わたしはひそかに特訓を始めた。
カラフルなボールに乗る特訓だ。
自分の家には、カラフルなボールがあったにはあったが
それは残念なことにビーチボールだった。
だから乗るとフニャフニャ・・・
家の前のコンクリートでできた大きな鯉の水槽の角につかまりながら
わたしは「よっ!」とのってみた。
満を持して、手を放す・・・
あっという間に天地がひっくり返り
運悪く水槽の角に頭をぶつけて脳震盪で気絶した・・・
いまのようにすぐには救急車を呼ばない。
家の仕事場(テーラー)に寝かされた。
気が付いた時、心配そうに母と父の顔が
天井を背景にわたしの顔を覗き込んでいた。
人を笑わすこと・・・
みんなが笑顔になること・・・
そういうヒーローになりたかった・・・
デビュー作(笑)「かっぱ」を踊りながらそんなことを思い出していた。
今思えばわたしのダンス人生で必ず登場した「動物シリーズ」はこれが原点だった。
そういえば・・・
この舞台で他にも踊った作品はあったのに、
それが何だったのか全く覚えていない(笑)
人を笑わすこと・・・
みんなが笑顔になること・・・
「あほ」は真面目にやるに限る。
しかも大真面目に・・・(笑)

theme : 気付き・・・そして学び
genre : 心と身体
