BOOK BEST5 日本はなぜ、「基地」と「原発」をとめられないのか 矢部宏治
根底のある大きな脈歴を知る一冊になります。

「とくに『敵国条項』のくだりを読んで、
すっかり暗い気持ちになった方もいらっしゃるかもしれません。
私も最初、史実を知ったときは、かなりショックを受けました。
(中略)
特に若い読者に聞いていただきたいのですが、
70年続いた『戦後日本』という国家は、
遠からず終焉をむかえます。考えてみてください。
首相になった人間が必ず公約と反対のことをする。
すべて社会保障にあてますと約束して増税し、
大企業減税を行う。
お金がもったいないから、子どもの被爆は見て見ぬふりをする。
人類史上最悪の原発事故の責任を誰もとらず、
何の反省もせずに再稼動しようとする。
首相の独断で勝手に憲法の解釈を変える。
そんな国が、これ以上続いていくはずがありません。」










以前、宙結び随想 で
政府が私たちの暮らしに口を挟みすぎる・・・
とお話したことがあります。
私たちは「社会」を作る側であって
「社会」に翻弄されて
いのちを見失う側ではないのです。
自衛官につくことも
一介のカフェのオーナーになることも
自分がそれになりたいことが大前提のはずなのに
国がお金を盾に誘導したり
貧困を作ってから
そうせざるを得ないようにするのは
実に気持ち悪いことのような気がします。
教育の現場の端くれにいますので
国公立とはもはやいえない国立大学の学費や
大学生の奨学金(教育ローン)などの問題と
この基地、原発の問題は根っこが同じに見えます。
だから、食い入るように読みました。
「大学にいくのは自分の人生の可能性を広げるため」
といわれてきた進路指導そのものが
この5.6年で全く意味を成さないどころか
かえって足かせになっている時代なのです。
医療(保険)、農、教育・・・など、
私たちを取り巻く生業の処々で
口を挟まれるだけでなく
「誘導」されないために「草の根」として学ばざるを得ません。
「あなたがすることのほとんどは無意味であるが、
それでもしなくてはならない。
そうしたことをするのは、世界を変えるためではなく、
世界によって 自分が変えられないようにするためである」 ガンディー
特に若者たちにとって、
第一次大戦後に生きたガンディーの言う学びと行動が
この日本でも大切になってきているのです。










「私にとって重要なのは在りし日のこの国の文明が、
人間の生存を出来うる限り気持ちの良いものにしようとする合意と
それにもとづく工夫によって成り立っていたという事実だ。」
渡辺京二さんは「逝きし世の面影」の中でこういいます。
(京都府出身。碩台小学校、大連一中、第五高等学校を経て、法政大学社会学部卒業。
書評紙日本読書新聞編集者、河合塾福岡校講師を経て、河合文化教育研究所主任研究員。
2010年、熊本大学大学院社会文化科学研究科客員教授に就任。)
この本は、江戸時代末期から明治にかけて、
当時の日本人の持っていた幸福の気質が急速に変化していく様子を、
日本を訪れた外国人が残した多くの記録や文献を通して考察しているものです。
訪れた外国人も
日本についてこう述べている・・・。
チェンバレン『日本事物誌』
「日本には貧乏人はいるけれど、貧困は存在しない」
ジョルジュ・ブスケ『日本見聞記』
「日本人の生活はシンプルだから貧しい者はいっぱいいるが、そこには悲惨というものはない」
まさに「逝きし日の面影」になりました。
私は、一本の草の根として、
「人間の生存を出来うる限り
気持ちの良いものにしようとする合意」を
ささやかな思いと行いの中で見出したいと思います。
