冬、冬至のころ⑥・・・幸田露伴流、幸福論(4)
恩恵に預かっている技術のすべては
先人たちの植福のお陰です。
石垣りんの詩、「地方」を
私は何度もここにあげさせていただいていますが、
「ふるさとの人は山に木を植えた。
木は四十年も五十年もかかって
やっと用材になった。
成人してから自分で植えたのでは
一生の間に合わない
そういうものを植えて置いた。
いつも次の世代のために
短い命の申し送りのように。」
文字通りこういう木があるお陰で
私たちは日本を豊かな瑞穂の国ということができ、
きれいな水と空気の国だということができるのです。
しかし、
「お金」中心の世の中にして
その水や土、空気を、公害や原発事故で汚し、
今や大切な水までも値札をつけて売ろうとしているのが今の日本です。
また、「木」に例えられた先祖からの様々な恩恵が
私たちを守り、便利にし、栄えさせてくれてきましたが、
いまや6割以上の人々が生活が苦しいと答える世の中へ・・・
そんな庶民を見て見ぬ振りをし、
間違いなく片寄りのあるこの世界を是正するどころか
さらに私物化し、搾取するありさま・・・
恥を忘れ、ましてや「惜福」も「分福」も忘れた
一部の傲慢な大人たちだけで決められるこの国に
果たしてこの「植福」を残すことができるのでしょうか・・・
それは無理でしょう。
せめて私たち庶民が、
なんとしてもこの「植福」のこころを忘れぬよう
未来の子供たちや若者たちに残してやれるものを
真剣に考えなければなりません。
露伴は言います。
「人間として徳を積むことや真の知識を増やしていくことは、
人間の幸福の源泉である。」
衣食住、医療、農業、教育・・・
あらゆるものを 約1億2000万人のうち、
たったの707人(実際はもっと少ない)で決めるというのは
人類のもっとも進んだ仕組みと言えるのだろうか・・・
リンゴを得たいなら
リンゴの苗を植えねばいけません。
お米が欲しいなら
籾をまかねばなりません。
何でもよく知っていてすごいと思っていたニュース解説者が
実は、各分野の専門家たちの調査意見を全てパチっていたとは・・・
人権派と呼ばれたジャーナリストが
事務所の女性の多くに性的暴力を加えていたという恥知らずさ・・・
もう狂っています・・・
せめて・・・せめて、
私たち庶民が、リンゴを得るためにリンゴの苗を植える・・・
世界では、#MeTooのムーブメントが起こってるとか・・・
あたりまえのことをあたりまえにして
品を保ち、徳を積み、真の知識を得ていきたい・・・
そういう意味での#MeTooもひろがるといいな・・・
こころから、そう思います。
theme : 気付き・・・そして学び
genre : 心と身体
冬、冬至のころ⑤・・・幸田露伴流、幸福論(3)
「有福」・・・生まれ落ちた時にすでにある幸せ。先祖たちが残した福。
「惜福」・・・もらった福をすべて使い切らないこと。
「分福」・・・人に自分の福を分け与えること
と、ここまでお話ししてきました。
よく考えれば、私の周りで尊敬する方々は
自然にこの「分福」をなされていて
そして、その方々もお幸せそうで・・・
なるほどと、幸田露伴の話は本当に納得がいきます。
私は、人生の後半のほぼすべては
「お詫び」と「ご恩返し」ではないかと思っていますが、
今回の露伴の話も合せ沿いながら
この後半を生きていきたいと思います。
さて、三つめは何か・・・
それは、「植福」だと露伴は言います。
植福とは、現代ではなかなか使われない言葉ですが、
露伴の定義はこうです。
「自分の力や感情、知恵などを使って
世の中に幸福をもたらす物や情趣、
あるいは知識で貢献するということ」
※情趣・・・しみじみと落ち着いた気分やおもむき。
この世には、佇まいだけで人を癒したり
落ち着かせたりしてくれる人がいます・・・
わたしは、仙人にあこがれますが、
まさに仙人がそうです・・・
七福神の恵比須さんや大黒さんのあの笑顔は
眺めているだけでこちらも朗らかになる・・・
だからみなさん飾られる・・・
ペットの犬や猫、小鳥だってそう・・・
野原の小さな花も
この「植福」を惜しみなく提供してくれています。
自分のことだけを優先させる浅はかな人間だけが、
不機嫌をまき散らし、他者を巻き込んで
周囲を嫌な思いにさせる愚行に陥ります。
子どもも日々いろいろなことがあることは理解できますが、
そうやって不機嫌をまき散らしている生徒には
私ははっきりと諭します。
「不機嫌をまき散らすのはやめたほうがいい」
自分の行いや行動、感情が、知らず知らずのうちに
どれだけ周りの人に影響しているのかということを
感じてほしいからです。
できるだけ気持ちを穏やかに保ち
笑顔でいることは、それだけで「植福」ということになります。
今日も一日植福の気持ちで笑顔でいたいものです。
では、もう少し、
植福の話を続けましょう・・・
つづく・・・
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