令和buzz263・・・「お陰さまで」
お互い様・・・
お陰さまで・・・
そう思えるゆとりを「優しさ」というのかもしれません。
忙しかったり、心の余裕がなかったり、
うぬぼれていると、この優しさは生まれません。
昔、高度経済成長期の働き盛りのお父さんや
バブル絶頂期の小学生だった生徒たちにさえ
その優しさがなくなったときがありました。
どうやら大きな経済成長というのは、
どこか人間性を滅ぼす危うさを持っちるようです。
サラリーマンで塾人をしていたときの、
とある男子生徒(有名進学校)の話です。
今では、もう40才近くになっている子でしょうか・・・
センター試験も近づいたある冬の日、
その生徒のお母さんが入院されたことを聞いた私は、
「お母さん大丈夫ですか?」
と声をかけました。
するとその生徒からは、
とても冷たい言葉が帰ってきたのです。
「僕とは関係ありません」
思わず耳を疑いました。
いろいろなご家庭があり、
その子とお母さんに何があったかはわかりません。
また、受験モードで、気が立っていたのかもしれませんが、
それらを差し引いても、
聞き流すことはできませんでした。
当時厳しく諭したことを今でも覚えています。
自分にとって関係ない人間など
家族はもちろん、この世には一人もいません。
見ること、感じることはできなくとも、
風が吹けば桶屋が儲かる・・・
バタフライエフェクト・・・
複雑系世界・・・
私たちの世界は、
互いに複雑に要因がかさなって
ある事象をなす・・・
それを先人たちは、
明日は我が身・・・
お互い様・・・
お陰さまで・・・
という、分かりやすい言葉で伝え続けてきたのだ・・・
厳しく諭した彼のそのときの表情は、
それでも府に落ちた様子ではありませんでした。
これはその出来事と関係ないですが、
結果的に、彼はその年の受験はうまくいかず、
塾をやめ、寮制の別の予備校にいきました。
そんな出来事の記憶も
途切れ途切れになった翌シーズンの春、
彼が見事に自分の志望していた大学に
合格したと風の便りに聞きました。
心から本当によかったなと思いました。
するとどうでしょう・・・
突然私がいる塾に遊びに来てくれたのです。
「あのときは、子供過ぎて、
ご迷惑をお掛けしたなーと思って。
挨拶いかないと、と思っていました。」
彼にどんな心境の変化があったのかはわかりません。
ただ、人知を越えた何かがこの世にはあると
気がついたことは間違いありません。
「お陰さまで」を知った彼の顔が、
本当に爽やかだったことを
今でもはっきりと覚えています。
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theme : モノの見方、考え方。
genre : 心と身体