十力の金剛石 花巻、賢治に会いに
その十力の金剛石はまだ降ふらない。
おお、あめつちを充てる十力のめぐみ
われらに下れ
宮沢賢治「十力の金剛石」より
彼のこの哀しみ、切なる祈り・・・
まるで、庶民が搾取され続ける
今の日本、いや世界を言い当てている。
どこまでも奥が深く、
それでいいて、上空に突き抜け、
繊細で、斬新な彼・・・
それゆえ 時に予知者となる宮沢賢治・・・
恐らく私の一生をかけても
きっとたどり着くことはできない彼の世界観は、
今後、全人類にとって
探求と発見の連続になることと思う。

今回 花巻で彼の童話村を訪ねたことで
また素晴らしい作品に出会えた。
「十力の金剛石」
初期の作品らしいが、
私は全く知らなかった。

童話村、はじめて入った白い部屋・・・
その部屋に入った瞬間、私は涙が止まらなくなった・・・
「???」 の ぴよさんの横顔をしり目に
流れるままにしておいた。
その白い部屋には、さらに白い椅子が何台かおかれていて
自由に腰掛けることができる。
白の中の白...
大きな夜空の木の下の白い椅子に座ると
足元に文字が見えた。

「十力の金剛石」の一節だった。
そして十力の金剛石は
野ばらの赤い実みの中の
いみじい細胞の一つ一つにみちわたりました。
彼の言葉は、音であり、色であり、
やがて、幻燈になる。
こころが退化した私たちには、
彼の活字だけではもう十分な映像を引き出す力がない。
「十力の金剛石」
涙が出るほど美しいお話です。
彼は、ずっとずっと遠くに行ってしまって
現代のわたしたちが追い付けない場所にいることでしょう。
それでも私たちは、追いつこうと努力しなければいけません。
でないと人類が滅びてしまう気がするのです。

