夏、小暑のころ②・・・なんで勉強しなきゃいけないの?
「君たちは何でこんないやな勉強を
毎日毎日しなければいけないと思う?」
に対して、彼らが書いた回答はこれ・・・
A「そういうのがないと自分で夢を持てないから」
B「プライドをきたえるため」
C「いける高校や大学を広げることができて、
それはしょうらいをひろげることにつながるから」
D「自分自身の将来の道を広げるため」
E「自分で自立していくため」
F「自分が生きていく上で考える力を養うため」
あらかじめ、わたしが
「いい高校、大学、会社には入るためなんていうのとは違うぞ~」
と言い足したため、その回答はなかったが
付け足さなければひょっとしたら、あったかもしれない。
わたしにとっての最適な回答はF。
そして、Fの生徒は「考える」ことが
日頃からでき始めている。
「考える力」
学問の基本はこれに尽きる。
別の言い方をすれば
「工夫する」
「発想の転換」
「心の置き所を変える力」
とも言える。
実は、いまの学校の勉強は、
受験のための道具になってしまって
すべて必須科目になるが
本来は学問を楽しいと思う自由がある一方で
楽しくないと思っていい自由もあるはずなのである。
そこが確保されないのが
いまの受験システムである。
その必須という不自由さ、つまらなさの中で、
唯一残された普遍性は、
考えること、工夫することの可能性である。
考える、工夫する・・・
生きていくうえで一番大事な力だ。
ある方法がだめでも
別の方法がある・・・
「ある道」が閉ざされても、
また、自分に「ある力」がないとわかったあとでも
別の道がある・・・
そう信じられれば、人は幸せだ。
自分のいのちを信じ
相手のいのちを信頼し
互いに協力しながら
時には、喧嘩もしながら
それでも前向きに自分の人生を歩むには
考える、工夫する・・・
そういう力が必要だ。
実は、受験などのシステムがなくても
この力は養えるし、養うのが筋(本質)だ。
しかし、いまの学校現場ではそのシステムがないと
その力を養えるように指導できる先生は少ないし
学校現場もこのシステムに甘えて
通知表で生徒をなかば脅したり、
従えさせたりする拙い先生もいることも事実である。
翻って、わたしたち塾産業も決して例外ではない。
だから日々、学ぶ原点・本質を忘れないように
子どもたちに伝え、自分自身肝に銘じないといけないのだ。
A~Eはそれぞれ
大人が日ごろ言っていることを
自分で考えることなしに
思い込んでいるのではと思う。
パスカルが言った。
「人間はひとくきの葦にすぎない。
自然の中で最も弱いものである。
だが、それは考える葦である」
考えるというのは
ある解答めいたことを言われた時
本当にそうかな?と反対のことを考えることから始まる。
たとえば、
「勉強しないと夢が持てない」と大人は言うけど
本当にそうだろうか・・・
じゃあ、世の中で夢をかなえている人は
みんな勉強ができた人かな?
この問いを出せることがすでに考えるということなのです。
世の中で夢をかなえている人は
みんな勉強ができた人かな?
の問いができれば、そうでない人を探し始める。
当然、世の中には、勉強は苦手であっても
夢をかなえている人はいる・・・
その人を発見した時、
「勉強しないと夢が持てない」は
そうとは言い切れないと気が付く。
これが考えることです。
つまり、その人を見つけた時に
「じゃあ、本当の答えはなんだ?」と
あたらしい高次の解答を探し始めます。
それが成長ということです。
Aの生徒は、大人にある解答を言われた時に
この反論の問いを持つ力がないということです。
だからその力を身に付け
自分の考える葦の幹を
太く強くしていくことが大切になります。
パスカルは続けます。
「すべての人間は幸福を求めている。
これには例外がない。
その手段がいかに異なっていようとも、
みなこの目的に向かっている。
意志は、この目的に向かってでなければ、
一歩も前へ進まない。
これはあらゆる人間の、
みずから首をくくろうとする人に致るまでの、
あらゆる行為の動機である。」
幸せとは、心の置き所が自由になることをさす。
こうでなければいけないという思い込みから
解き放たれることが「幸せ」でなのである。
その思い込みを開放することが「考える」ということなのだ。
どんなにアマノジャクで強がった人間でも
「わたしは不幸になりたいです」と
力強く言う人間はそういない。
さて、この「幸せ」になろうとするその道筋で
「選択肢の多さ」と「幸せ」をつなげることが多い大人たちだが
「より上位の学校に行くこと」
「選択肢が広がること」
「それが幸せにつながること」
この3つを因果関係としてつなげてしまうのは
少し違うのでは・・・ということを次にお話したい。
つづく・・・
theme : いのちあるものが いのちあるように
genre : 心と身体
