夏、夏至のころ⑬・・・53年前の運転手さん
さわさわとカーテンを揺らしながら入ってくる風。
今日の予報は70%の雨だが、
すでに蝉も鳴いた・・・
そろそろ梅雨明けだろう。
少しは涼しくなってくれるとありがたい。
わたしは9月生まれだから
53年前の7月は母のおなかの中だった。
生まれた私を待っていたのは、東京オリンピック。
生後一か月で中耳炎を患い、
近くの国道を聖火が通過するのを
耳に包帯を巻いて一緒に見たらしい。
そんな私が人生上はじめて九死に一生を得た出来事がある。
すでにハイハイをしていた私。
来客で若いお姉さんが来ていた。
仕事場で母としばし談笑の後、
そのお姉さんが家を出る。
母は奥の台所へ・・・
当時の春~夏の家は、すべて開けっ放し・・・
母が少し気をゆるしたわずかの間に
わたしは、そのお姉さんを
ハイハイで追いかけたらしい。
かなりの段差もあるはずなのに
どうやって越えていったのかわからない。
とにかく進んだ。
わたしの家の前は道路を挟んで線路・・・
道路は車2台が通り過ぎられるほどの幅・・・
お姉さんは家を出て右へ・・・
お姉さんを見失ったわたしは
まっすぐ線路の中へ・・・
線路に入るにもかなり段差があるがどうやって!?
さっぱりわからない(笑)
そこへ運悪く電車がやってきた・・・
さて、ここからがのんびりした昭和である。
電車の運転手さんは、なんと!
ハイハイをする私を遠くから発見し、止まってくれたのだ。
しかも運転席から降りてきて
当時、そのあたりに三件しかなかった家々を巡って
「この子はどこの子だろうね?」と
探して届けてくれたのだ。
今では考えられない。
当時、新聞沙汰など、大事にならず、
もちろん我が家には罰金も科されていない。
運転手さんは大丈夫だっただろうか・・・
わたしはずっとその運転手さんに
お礼を言いたいと思ってここまで来た。
もちろんそれはかなっていない。
だが心の中では、ふとした瞬間に
いつもお礼をお伝えしている・・・
「あの時は本当にありがとうございました。
おかげさまで、今も生きて生かされています。」
theme : 気付き・・・そして学び
genre : 心と身体
