夏、夏至のころ②・・・水を得た魚
実にうれしい出来事が起きた。
卒業生が遊びに来てくれたのだ。
しかもとびっきりの笑顔で・・・
高校が楽しいと・・・
なんと嬉しい言葉だろうか…
もちろん高校を選んだのは彼女だし、
そこに向けて頑張ったのも彼女・・・
そして、いまもそこで頑張っているのも彼女・・・
すべて本人が頑張っていることだが
当時志望校選びに悩みに悩みそれでも
わたしはあえて「・・・にしたら」とは言わなかった。
よく大手の塾では○○高校△名合格というチラシを打つが、
伝統的なその手法にわたしはいつも疑問があった(ある)。
たいていその○○高校は屈指の進学校のことが多い。
もちろん私もそういう会社に
12年以上身を置いていたので偉そうには言えない。
それでも、
「進学校以外の高校も載せてください」と社長に直談判した。
がんばったのはみんな同じ・・・
そういう思いがあった。
結局通らなかった。
理由は簡単だ。
載せたい理由が違うからだ。
わたしは、頑張った全生徒たちの誇りとして・・・
社長は、こういう屈指の進学校に入っている塾ですよと
宣伝効果を最大にしたいため・・・
広告宣伝とはよく言ったもので
何を宣伝するのかがチラシには現れる。
無理やり百歩譲っても
進学校の○○高校に入るために頑張ったのは
わたしたちではなく、生徒たち・・・
わたしたちは単なる裏方。
裏方のすごさを自慢する舞台はない。
しかも、卒業生たちが
そのチラシを目にしたとき・・・
けっして進学校ではないが、
胸を張って入っていった彼ら彼女たちの人生に
いらぬ劣等感を与えるのではと本当にいやだった・・・
勉強ができることは一つの個性にすぎない。
がんばりと誇りに偏差値は関係ない。
しかし、わたしの意見が通るはずがない。
わたしの今の塾は広告も打てない大変な零細塾だが(笑)
それでも、あえて「広告」というなら
この卒業生の笑顔!と胸を張って言える。
昨日も同じ中学の後輩に
「学校楽しいよ!うちにおいでよ」と言っていた彼女を見て
本当に本当にうれしかった。
笑顔のおすそ分けをいただいた。
「水を得た魚」
その人に合った場で生き生きとすることをそういう。
それぞれの人間にはそれぞれの水がある。
辛すぎず甘すぎず
それでいて魚が自然体で泳ぐ水・・・
その水を一緒に探すお手伝いをするのが私の仕事である。
人生は、能力ではなく相性。
この年になるとつくづくそう思う。
それは自然を見ていればよくわかる。
どんな高価な苗でも
土が合わねば枯れる。
魚と水の関係もそう・・・
人生最初に
相性最良の水を探し求めるのが高校なら・・・
ふと考えた・・・
それが川なら、
上流に向かうのだろうか・・・
下流に向かうのだろうか・・・
きっと下流なのだろう・・・
大きな大きな大海原への川・・・
上に上がるのが人生ではない・・・
でも、しばらくして鮭のように
上流の故郷に還っていくのもよい。
還るための「上流」があってもいい。
どちらにしても
水族館の水槽でないことは確かである。
昨日は彼女の笑顔で一日の疲れが吹き飛んだ。
そんないい一日であった・・・
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