春、雨水のころ⑪・・・言葉のチカラ
何気ない言葉を知らない。
日常、会話の中で使わないのは仕方がないが、
人生のここ一番というときに
言葉やことわざを知らないのは
実は一大事なのである。
いや、一大事というよりは
出せる力を出せなくて
いらぬ不運を招くことさえある。
昨日、県立高校の倍率が新聞に載った。
実はこの日は、生徒たちにとって
微妙な心情を露呈する日でもある。
倍率が高い高校を志願する生徒で
私立高校をすでに合格している生徒は
その私立高校へ心が逃げてしまう場合がある。
ずっと挑んでいた心が、倍率に心がひるみ
私立があることで「逃げ」に転じてしまうのである。
物事にはよい「逃げ」と、悪い「逃げ」がある。
それを判断するのはとても難しい・・・
わたしは、無意味な戦いが嫌いだ。
ジブリ映画、借りぐらしのアリエッティで
父親のポッドが言うセリフが好きだ。
「挑まなくてもいい危険というモノもある。」
基本そうやって生きることは大切だ。
だが、あえてこの世に戦いが残っているとしたら
それは自分のこころとの戦いだろう。
逃げることで自分のいのちが輝けば、それは正解の逃げ・・・
逃げることでいのちが沈めば、それはやらなければならない戦い・・・
わたしは、そうやって見極めるようにしている。
また、人生には、ここぞという節目がある。
そう何回もあるものではない。
それ以外は逃げていい。
たが、本当に「ここぞ!」を迎えたら
その時には、人事を尽くすことが大切だ。
これは、おのれ自身の問題で
相手がいて逃げることでも、戦うことでもない。
「人事を尽くす」という崇高な立ち位置である。
揺れる小舟に、二本の足で踏ん張って
必死に荒海に落ちないように立ち続ける感じである。
「人事を尽くして天命を待つ」
昨日、倍率を見て心が揺れた生徒は、
この言葉を知らなかった。
踏ん張り続けることで現れる青空を知らなかったのだ。
これは一大事だ。
「人事を尽くして天命に聴(まか)す」
原文はこの言葉だ。
日本では、前者が慣用だが、
この「聴(まか)す」とはなんと美しい言葉なのだろう・・・
人事を尽くした者にしか聴こえない声があるのだ。
生徒に伝えた・・・
人事・・・つまりやるべきことやり切る
人事を尽くすとは、自分の能力でやれることはすべてやり切ること。
ここまでは人間の仕事。
そして天命・・・
やり切った者に届く天からのメッセージ。
やり切った者にしか届かない天命・・・
やり切ったからこそ聴こえる天命・・・
逃げ出したいけど、逃げてはいけない自分との戦い・・・
その孤独な戦いに携えていくのは、この言葉のチカラ・・・
「人事を尽くして天命を待つ」
この言葉を生れてはじめて知った彼らは
涙をポロポロ流した。
あなたがやり切ることを支えます。
theme : 気付き・・・そして学び
genre : 心と身体
tag : 言葉 人事を尽くして天命を待つ