春、春分のころ⑩・・・開花宣言

夕空に凛と伸びた枝の先、たった一輪開いていた。
世の中に たえて桜のなかりせば
春の心はのどけからまし
在原業平
歌意は、世の中に桜と云うものがなかったなら、
春になっても、咲くのを待ちどおしがったり、
散るのを惜しんだりすることもなく、
のんびりした気持ちでいられるだろうに。
この時期は、あそこの桜は咲いたが
あそこはまだだ・・・
と心が落ち着かない。
咲いたら咲いたで
いつまでもつだろうとか、
花見はどこにしようかと心が落ち着かない・・・
津市の桜の名所は「偕楽公園」らしい。
この公園は、もともと津藩の鷹狩りの休憩所だった。
津藩第11代の藩主、藤堂高猷(たかゆき)が
1859年(安政6年)につくった別荘「御山荘」(ござんそう)を起源としているようだ。
自然の地形をそのまま利用して
池や橋が作られている。
もちろんここも素晴らしいが
隠れた名所がある。
それは、近鉄津新町近くの一之坪公園・・・
どんな由来で作られたか、私は知らないが
ここの桜が実に見事だ。
以前の会社の近くだったこともあり
よく立ち寄った。
きのう、そばを通った折確認したがすでに3分咲き・・・
桜木によっては、ほぼ満開だった。



私の実家にも桜の木があった。
自営業らしい長さ二間の引き戸の玄関・・・
木造枠の大きなガラス戸だった。
その引き戸の両端に対になって植えられていた。
ある日、小学校から帰ると
いつもの玄関の風景と違っていた。
桜の木がバッサリと切られていたのだ。
夏の毛虫に手を焼いた父が思い切って切ってしまったのだ。
結構ショックだったのを今も覚えている。
木のいのちを生れてはじめて実感した時だったかもしれない。
何となく体の一部をもがれた気持ちだった。
樹木はそこに住む人といのちとつながっている・・・
その時私は直観した。
立派な木の下で、花を愛でたり、木陰の恩恵にあずかるとき
その樹木をほめたたえてあげてください。
かれらは動けないが、根で交信しあい
枝葉で我々に言葉を伝えている。
人がほめたたえるたび、
きっと喜び合い、お礼を言ってくれている。
さあ、桜真っ盛りの季節・・・
次はどこでお花見をしようか・・・
みなさんが知る隠れた名所もこっそりと教えてください。
theme : 気付き・・・そして学び
genre : 心と身体