樹下石上 ㉜・・・糸とボタン
日本の繊維事業をアメリカに売った。
糸と繩の取引と言われた。
昭和44年から47年にかけてのことだ。
紳士服と婦人服のオーダーを承って
生活をしていた我が家の様子が変わったのは
まさにこのころだった。
アメリカから安い繊維がどっと入ってきて
国内の繊維業界とそれに関連するウチのような商売は
大打撃をこうむったのだ。
それまでは、駅前や隣町に行って
背広のネーム(刺繍)や布に合うボタンを探しに
母と一緒に出掛けたものだが
思い返せば、このころからめっきりと行かなくなっていった。
つまり我が家に仕事がなくなっていったのだ。
昔よく連れていかれたボタン屋は見るも楽しく、
自分で作らないくせによく母に
「このボタンはどう?」なんて
いっちょ前に意見して選んでいた(笑)
そのころのボタン店はちょうどこんな感じ・・・

(画像はこちらから→在庫8000個のボタン屋さんに寄り道)
壁に積まれた小箱の前面には
大きさも様々な色とりどりのボタンが並んでいた。
そんな思い出からか、
安く買ったシャツのボタンを
総入れ替えしたくなる時がある。
これは、市内の某有名激安店で
300円ほどで買ったシャツ・・・
もともとついていたボタンは
半透明の白で何か物足りない・・・
古く擦り切れてしまったシャツのボタンをすべて取って
それをこちらに付け替えた・・・

単なる自己満足だが、
父や母のボタン付けを見てきた私は、
自慢ではないがボタンは几帳面につける・・・
ボタンを付けていると気づくことがある。
親から子へと受け継ぐものは
ボタン付けという具体的な技術だけでなく
思い出とともによみがえる
父や母の「思い」・・・
そういったものが
本当の意味での財産なのだと気づかされる・・・
工夫すること・・・
手を使うこと・・・
生活心を豊かにすること・・・
そういったことが
私の中に確実に根付いている。
お陰様でありがたいことだ・・・
theme : 気付き・・・そして学び
genre : 心と身体
tag : ボタン