春、清明のころ⑬・・・興味ないけど、関係のあること
➡「がんばっても報われない社会が待っている」東大の入学式で語られたこと【全文】
昨今の女子学生と浪人生に対する
医学部不正差別入試に触れながら
上野千鶴子さんはこう述べた。
「がんばってもそれが公正に報われない社会が
あなたたちを待っています。」
何も医学部に限ったことではない。
世の中には確かにそういう面がある。
そしてこうも続けた。
「そしてがんばったら報われるとあなたがたが思えることそのものが、
あなたがたの努力の成果ではなく、
環境のおかげだったこと忘れないようにしてください。」
「あなたたちのがんばりを、
どうぞ自分が勝ち抜くためだけに使わないでください。」
「恵まれた環境と恵まれた能力とを、
恵まれないひとびとを貶めるためにではなく、
そういうひとびとを助けるために使ってください。」
パフォーマンスとしては控えめで穏やかな感じのするスピーチだったが
静かな澄んだ声で、しっかりと語られた素晴らしいスピーチだと思う。
40年前に、それまでなかった「女性学」を立ち上げ、
パイオニアとして、学問のベンチャーとして
第一線を走ってこられたこの方の動機は、
「あくなき好奇心と、社会の不公正に対する怒り」だったそうです。
さて、最近の子どもたちと接していて気になる言葉がある・・・
「興味ないし・・・」
けだるそうに、それでいて
極太の黒のマジックできっちりラインを引くその言葉は
ときどき私の心をキリっと痛めさせる。
自分を守るためなのか・・・
単なる拒絶なのか・・・
それはよくわからない。
確かに興味ないことはある。
その存在は否定しない。
わたしも、化粧品やアクセサリー、
ファッションや芸能界には全く興味がない。
ただ、興味ないそのことが、
わたしの、あなたのいのちと遠縁で繋がっている・・・
そういうことだってある。
例えば、野良猫が歩いている・・・
「わたし」とは関係のない猫だ。
仮に猫に興味がないとして、
心の中で「興味ないし・・・」とつぶやいてみる。
だが、本当にその猫は「関係のない」存在なのか?
本当に私とつながっていないのか・・・
それは誰にも分らない・・・
でも、いつか死ぬときが来て
走馬灯の中にその猫が現れて、
人間の言葉で 「・・・!」 と話して
ものすごく重要なメッセージだった・・・
そういう可能性はきっと「0」ではないだろう。
どうでもいいけど、どうでもよくないこと・・・
興味ないけど、関係あること・・・
そういうマジックでは引けない領域がある。
人は誰もが自分の人生のパイオニアであり、ベンチャーだ。
だから、「興味ないし・・・」と
極太の黒のマジックできっちりラインを引いたその向こう側に
自分とつながっている何かがあるかもしれない・・・
そう思うことは意外に重要だ。
この世は「空の世界」・・・
気づいていないだけですべてつながっている・・・
縦にも横にも、四方八方につながっている・・・
仏陀は2500年前にそれに気が付いて
後世の人類に「空」という言葉で残した。
どうでもいいけど、どうでもよくないこと
興味ないけど、関係のあること
そういうものがまさに「空」・・・
この「空」の存在を今の若者は
どんな時に感じるのだろう。
なにをしたらいいかわからない・・・・
好きなものがわからない・・・・
そういった五里霧中を晴らしてくれる人生のベンチャー領域は
その狭間にあるのではないか・・・
老婆心ながら少し気になる昨今である。
theme : 気付き・・・そして学び
genre : 心と身体